チェコ人男性と結婚する場合の姓の選択


 
日本人女性がチェコ人男性と結婚する場合、最初に姓の選択という難問があります。
なぜ “難問 ” なのかというと、チェコ(他のスラブ語圏の国含む)では、文法に男性型・女性型があるように姓にも男女の型があるため、少々ややこしい問題が起こるからです。

姓に男女の型というのは、例えばこのようになります。

夫:ノバーク(Novák)
妻:ノバーコバー(Nováková)
息子:ノバーク(Novák)
娘:ノバーコバー(Nováková)

家族でも男女で姓が分かれるのです。もちろんスラブ系言語が分かる人には一目で家族だと分かります。(ちなみにノバークはチェコで一番多い名字。)

チェコ人との国際結婚の場合、「チェコ語のルール」vs「日本の婚姻ルール」の矛盾のせいで姓の選択肢が複数生まれます。詳しくは追って説明します。

下に、姓を選ぶ際の主な選択肢を挙げました(これら以外にもパターンはあると思います)。
どの選択をするかは本当に人それぞれで、便利さだけでなく気持ちの問題もあるし、悩む方が多いと思います。チェコに住みながら気づいた印象を項目ごとに書きます。

(1)夫婦別姓(=日本の姓そのまま)
(2)夫婦別姓でパスポートにのみ夫の姓を追加
(3)夫の姓そのまま
(4)夫の姓の女性型
(5)番外:子供の姓
 

 

夫婦別姓(=日本の姓そのまま)

国際結婚は、特に何もしなければ自動的に夫婦別姓になります。
わたしは「国際結婚なおかげで別姓選択できる、ラッキー!」と夫婦別姓に即決だったのですが、冷静にメリット・デメリットを考えてみましょう。

メリット
・婚姻の際、手続きが一番シンプル
・各種名義の変更が不要(地味だけど大きなメリットです)
・日本の社会に馴染みやすい

デメリット
・姓によっては外国人に覚えてもらいにくい
・夫婦であることを証明する必要がある時、婚姻証明書(婚姻後に役所から貰える)が必要
・夫の姓になることを夢見ていた場合、ちょっと悲しい
・子供ができた場合、やはり家族は全員同じ姓でありたい

カタカナの姓を持つのちょっとかっこいいな、と思わないでもなかったのですが、実際の生活(in 日本)を想像してみると不便しかない!特に日本社会では姓で呼ぶことが圧倒的に多いです。職場でも受付の類でも。通称で旧姓を使うことが出来ても、本名が必要なシーンも少なくありません。

例えば、姓が英語圏の「スミス」さんとか、ドイツ語圏の「ミュラー」さんとか、短く日本人にも聞き馴染みのある姓だったら呼ぶ側も抵抗ありませんが、もしこれが「カシュパーレク」さん(うちの夫ですが)だったら100%聞き返されますし、相手をいちいち戸惑わせてしまいます。
それに比べ、日本の多くの姓は外国人にとって、少なくとも読み方は分かる点でまだマシです。将来、日本で生活をする可能性がある場合(わたしもそう)、別姓を選択することは実生活の上ではメリットしかないと思います。
逆に完全に海外で生活すると決まっているなら、日本の姓でいるべき理由はそれほどないと思います。日本人であることを実感できる、という気持ちの問題が大事かどうかだと思います。


 

夫婦別姓でパスポートにのみ夫の姓を追加

別姓を選択したあとのオプションとして、パスポートの名前の後に括弧書きで夫の姓を追加できます。

メリット
・夫婦だということを手軽に証明できる

デメリット
・特になし?

あくまでもオマケなので、戸籍の名前に影響があるわけではありません。
括弧内には夫の姓(男性型)しか入れられないというのが基本ですが、外務省に直訴して女性型を許可してもらえたという記事を見ました。ただし、理由によるので、全員許可されるということでは無いようです。

この括弧書きの追加は婚姻のあとにしても良いですし(パスポートの更新費用が必要)、次の更新の際にしても構いません。ただ、この申請には戸籍謄本が必要なので、婚姻直後には出来ません(戸籍謄本に婚姻の事実が記載されるまで時間がかかるため)。
わたしは今は括弧書き無しですが、次の更新の機会に追加しようと思っています。


 

夫の姓そのまま

夫の姓(男性型)をそのまま名乗ることです。日本で暮らすのであれば全く問題ないと思います。この最大の問題は、チェコで周囲に違和感を感じさせるかもしれない事です。

メリット
・夫と同じ姓なので一目で夫婦と分かる(スラブ語圏以外に限る)

デメリット
・姓によっては日本人が発音しづらい・覚えづらい
・チェコでは男性に間違えられる

チェコ人にとって、女性が男性型の名前を持っていることには違和感があります。わたしは、チェコ語を勉強し始める前は「そういうものなのかぁ」程度に思っていたのですが、少しかじった後だと理解できます。
チェコでは、「外国人に限って男性型の姓を持ってもOK」という法律が出来たそうですが、全員がそのことを頭に入れているわけではありません。今でも、他国の姓に男性・女性の区別が無いことによほど違和感があるのでしょうか、雑誌記事などでは外国人女性の姓の語尾がムリヤリ女性型に変えられていることがあります。もし、チェコで女性が「ノバークです」と男性型を名乗っても勝手に女性型に変えられて話が進みそうな気がします。

(例:レイチェル・マクアダムス → レイチェル・マクアダムソバー)

チェコ人は日本のファーストネームを見ても男性か女性かなど分かりません。さらに、ほとんどの人はまさか女性が男性型の姓を持っているとは思っていません。
もし、会ったことの無い相手にメールを送るとき、署名にフルネームを書くと、男性姓から判断して男性だと思われるでしょう。もしくは、「名前は男性なのに、文面は女性??」と混乱させるかもしれません。(チェコ語では文法的に、書き手が男性か女性か分かります。)

と、デメリットが大きいように書きましたが、海外に住んでいる場合、ファーストネームで呼ぶことが多いし、日常生活で姓を使う機会ってそれほど多くないとも思います。わたしもチェコで姓を名乗る機会はほぼありません。

ちなみに、この場合、チェコで婚姻して姓が変わっても、日本の戸籍は特に手続きをしなければ旧姓のままです(日本の戸籍を変更するには6ヶ月以内の申請が必要)。

この手続きをせず二つの姓を持った状態でも日常生活に大きな支障は無いと思います。ただ、チェコに住みながらパスポートの名前が日本姓のままだと、身分証として役に立たないことがあるかもしれません。


 

夫の姓の女性型

チェコで暮らす場合、一番世間に馴染みやすい選択です。

メリット
・チェコの社会では一番自然

デメリット
・日本の戸籍では男性型にしかなれない(解決法あり)

日本の婚姻で妻が夫の姓になる場合、夫の姓と一字一句同じで無ければいけません。要は、男性型にしかなれません。なので、チェコでは女性型の姓、日本の戸籍では男性型の姓、と似てるのにちょっと違う二つの姓を持つというややこしいことになります。

《夫の姓そのまま》の項目と同じく、二つの姓を持っていても法律的にはセーフです。不便なことは、一字一句名前が一致しないといけない系の手続き(保険、銀行など)で同一人物であることを証明する追加書類を請求されるかもしれないことでしょうか。

日本の戸籍をチェコの女性姓に変更する(両方の国での名前をピッタリ同じにする)には、裁判所に申請をし、受理されれば、変更することができます。その裁判所に前例さえあれば簡単に済むようですが、逆に無ければ却下もありえるようなので、申請先の裁判所次第で労力は変わりそうです。


 

番外:子供の姓

チェコでの婚姻の際、子どもが「男子の場合・女子の場合」どの姓にするかを記入して提出しなければいけません。
例)男子:ノバーク(Novák) 女子:ノバーコバー(Nováková)

妻が日本の姓の場合は、このように日本の姓でも構いません。誰もこんな分け方はしないとは思いますが、可能ではあります。
例)男子:ノバーク(Novák) 女子:ヤマダ(Yamada)

わたし達は子どもは作らない予定ですが、記入はしないといけないし、万が一ということもあるので、一応真剣に考えました。

わたしの希望「チェコ姓:チェコ姓の方がヨーロッパで馴染みやすい」
ペトルの希望「日本姓:日本の(わたしの)姓の方が世界のどこでも読んでもらえるし発音しやすい。(チェコ語特有の)「Š」や「Á」というタイプしにくいアルファベットが無いのも良い。」

ペトルの言い分に納得したので、「男女どちらでも日本の姓」ということで提出しました。気が変わったらあとからでも変更可能だそうです。
普通、子どもを持つ予定のある人は、どちらの国で育てるかで決めると思います。

 
日本では想像もしなかった名前のルールが世界には色々あるんだなぁと思います。わたしはたまたま一番簡単な方法が感情的にも納得のいくものだったので、悩むことはありませんでしたが、難しい問題だと思います。決める時にポイントになるのは、「将来どこに住むか」と「子供の有無」でしょうか。
一生使うかもしれない姓なので、一時的に手続きが面倒でも自分の納得のいく選択をしたいですね。

2 Replies to “チェコ人男性と結婚する場合の姓の選択”

  1. 丁度来月式をするので、タイムリーな話題でした。
    こちらの場合、複合性も選べるので、事態はもっとややこしい?のかもしれません。
    幸い、パートナーの名字は無性別のため語尾変化の問題は免れましたが、違うところで、日本の戸籍制度が理解してもらえず、そんな馬鹿な制度があるのか?!別性が選べない?日本とポーランドで名前が別になる?国際法上許されないんじゃないのか?等々…まぁうるさい(笑)
    私の語学力と曖昧な知識では理詰めできなかったので、日本大使館に電話して聞いてもらってやっと納得してくれました。
    まさか家族に理論武装が必要だったとは…とほほ。大使館職員の方といかに日本の制度がクレイジーで理解不能かを共有して気持ちが収まったようです。
    私は日本の姓はそのままで、ポーランドでは複合姓を名乗ることにしました。変えない、というのが一番楽で悩ましくないんですが、折角なので(笑)

    1. おめでとうございます!お式、もうすぐなのですね!
      無性別の姓があるんですか。いいですねぇ。似た言語なのにチェコ人には無いみたいです。

      それは、丸く収めてくれた大使館の方に感謝ですね!正確な情報は結局、大使館や外務省に訊かないと分からないですし、気の済むまで電話しちゃっていいんじゃないでしょうか(笑)。
      複合姓って両方の姓を残せるのが良いですね。どっちの国に住んでも使いやすそう。日本の姓も入ってるから、日本でも同一人物って分かってもらいやすいですし。
      そう「せっかく結婚するのだし」という気持ちが、一番簡単な別姓を選択しない場合の大きな理由でしょうね。利便性だけで決められないところが悩ましいです。氏名に関する法律がもうちょっと融通聞くといいのに、と思うけど、あんまり自由でも問題が起こるだろうし、もっとものすごく国際結婚が増えない限り変わらないでしょうね〜。

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