プラハ散歩、ヴィシェフラド(Vyšehrad)の丘で民族墓地を訪ねる


 
日本への本帰国が決まり日本大使館に用事ができたので、プラハを訪れました。

このころ(9月上旬)のチェコのコロナウィルス状況は、第二波を確信し始めたところ。それまで200件程度だった新規感染者数が一気に1,000件を超えてきて、毎日のように新記録を更新していました。とはいえ、街に緊迫した様子は全くなく、わたしたちも帰国を控えてさえ無ければ過度に神経質になる必要も無いのですが、万が一感染してしまうと渡航を中止しなければいけないので(外国人である夫は出国前のPCR検査が義務)、帰国が決まってからは避けうる限りのリスクを避けて生活しています。せっかく久しぶりに訪れたプラハでも、3日間滞在する必要があったのですが、ショッピングは我慢し、食事もテイクアウトで済ませました。

そんななので、出来ることといったら「街歩き」。幸いプラハは、ただ歩くだけでも見どころが尽きません。
 

時間だけはたっぷりあるので、中心からほんの少し離れた「ヴィシェフラド(Vyšehrad)」まで歩いてみることにしました。
 

ヴィシェフラドとは、「výše=より上の(英:above))」+「hrad(城)」という意味で、「高い城」と訳されます。ボヘミア王国の国王が居城としていたこともあるなど、この場所には諸説あるそうですが、戦乱で破壊され城は再建されることなく廃墟となりました。現在は丘の上に、ヴィシェフラド城の遺構、教会、墓地、公園がある一帯のことを指します。

プラハ城の方からヴルタヴァ川沿いに南を眺めると見える黒い二本の塔が、ヴィシェフラドに建つ「聖ペテロ聖パウロ教会(Bazilika svatého Petra a Pavla)」です。これを目印に歩けば迷うことのないシンボルです。


 
中心地から離れているといっても十分に徒歩圏内。旧市街広場から約3km南。建物ウォッチングをしながら歩いているとアッという間です。観光客の多い賑やかな中心地の喧騒に疲れた時に逃避するにはちょうど良い距離。

川沿いを歩けばリラックスするプラハ住民の人間観察も楽しい。ナープラフカ(Náplavka)エリアで2019年秋にオープンして珍しいロケーションが話題となったカフェの前を通ります。(例によって個人的に飲食店自粛中のため入りませんでしたが)賑わっています。


 
道すがらときどき足元に目を落としてみると、「つまづきの石」(チェコ語では「カメニ ズミゼリフ(kameny zmizelých)」)を見かけるかもしれません。ナチスの犠牲者の名前・生年月日・命日・亡くなった場所などを刻印し、生前に住んでいた家の前の道に埋めこまれた真鍮プレートです。ドイツでも同じプロジェクトがあり有名ですが、チェコにも全国にあって、プラハだけで400以上があります。

 

目を引くキュビズム建築「コヴァジョヴィツォヴァ邸(Kovařovicova vila)」(ベドリッチ・コヴァロヴィッチ設計)の前を通り過ぎたらすぐにヴィシェフラドの丘への登り道が見えてきます。

 
急な上り坂(急だけど長くはないです)を登るとモルダウ川とプラハ城が見えてきます。景色を眺めるのを口実に休憩しつつ登ります。

 
城壁の遺構から真下に見えるのはモルダウ川。同じ川でも約2km上流のカレル橋周辺は足こぎボートが人気だけど、この辺りではカヌーが多いです。

 

遠くからでもはっきりと見えていた「聖ペテロ聖パウロ教会(Bazilika svatého Petra a Pavla)」に到着。近くで見ても高い。ただ、色はもっと黒いと思ってました。意外に明るい。

 

ヴィシェフラド民族墓地(Hřbitov Vyšehrad)

教会の隣りには、チェコを代表する著名人が多く埋葬されている由緒正しい墓地があります。日本人にも馴染みのある世界的有名人だと、作曲家のベドジフ・スメタナアントニーン・ドヴォルザーク(ドヴォジャーク)、作家のカレル・チャペック。合葬墓碑には、画家のアルフォンス・ミュシャ(ムハ)。これだけでもすごい並びですね。

入口に名簿と暮石の位置を示すマップがあるので、お目当てのお墓の場所を確認してから入ると迷いません。

 
緑が多く広い墓地内。一見チェコの一般的な墓地とそれほど変わりません。チェコでは、一般人でも写真やレリーフが埋め込まれているお墓は珍しくなく、日本のものより装飾が多いです。

 

これはスメタナの暮石。黒い石版に楽譜の模様が刻まれています。名前が筆記体なので園内マップを事前に見ていなかったら通り過ぎていたかも。
ちなみにスメタナの最も有名な『我が祖国』の第一楽章の題名は「ヴィシェフラド」なんですよね。この場所に埋葬されるべくしてされたとしか思えません。

 

カレル・チャペックのお暮。暮石自体はシンプルですが、よく見ると足元に本のオブジェがあるので作家だと分かります。


 
チャペックの名前よりも目立っている「OLGA SCHEINPFLUGOVÁ」は、妻で女優だったオルガ・オルガ・シャインプフルゴヴァーの名前です。

 

ドヴォルザークは胸像と背面の壁付き。なお屋根もあります。さすが国を代表する作曲家、とても立派。

 

ミュシャの名は、墓地を見下ろすようにそびえる大きな合葬墓碑「スラヴィーン(Slavín)」の中にあります。

 

知っている名前を探しながら歩くのもいいし、素敵な暮石を見つけてから「誰のお墓だろう?」と名前を調べるのも新しい知識に繋がります。こちらの首を傾げた胸像と咲き誇る花が目を引くお墓も、調べてみたら画家のアレシュ・ミコラーシュ(Aleš Mikoláš)という方でした。わたしは初めて耳にする名前でしたが、夫曰く、ほとんどのチェコ人は知ってる、とのこと。

 

聖マルティン教会のロトンダ(Rotunda sv. Martina)

聖マルティンのロタンダ(円形建物)は、11世紀後半に建てられたプラハで最大かつ最古の保存されているロマネスク様式のロタンダだそうです。広い敷地内で偶然見つけたので、そんなに歴史のあるものだとは知らず。円くて可愛いなぁ、と思って写真に収めました。1000年近くもの歴史があったとは驚き。

 

ヴィシェフラド公園(Vyšehradské sady)

教会と墓地を囲むのは広い公園。芝生で寝転がったり、犬を散歩させたり、住民の憩いの場となっています。夕方5時を過ぎてから行ったのですが、まだ日が長く気候も快適な時期だったので、仕事が終わってからのんびりしている人があちらこちらにいました。

「高い城」と言うだけあって、ヴィシェフラド全体がまるで見晴らし台なのです。プラハの街も遠くの森も、東西南北を見渡せます。

 
ゆっくり過ごせば半日でもいられるし、サクッと見るだけなら2時間もあれば十分。プラハで街の中心はひと通り見たからもう少し足をのばしてみたい、と思ったとき、「長い歴史(遺構と墓地)」と「ローカル民の日常(公園)」の両方が見られるヴィシェフラドは、ちょうどいい目的地です。

 

アクセス・料金・営業時間

道中が楽しい(川や建築)ので、オススメは徒歩。旧市街広場から約3km南、徒歩約30分。国民劇場からだと約15分。

公共交通機関だと、トラムの「Výtoň」停留所が最寄り。
地下鉄なら、C線でプラハ本駅から3駅目の「Vyšehrad」駅下車、徒歩10分。

ヴィシェフラド全体は公園のようになっているので、開園時間などはなく、いつでも入れます。

【民族墓地】
民族墓地は、入場無料・年中無休。ただし開園時間は月によって変わるので注意。
 11-2月 8:00-17:00
 3-4月 8:00-18:00
 5-9月 8:00-19:00
 10月 8:00-18:00

【聖ペテロ聖パウロ教会】
[入場料金]50Kč(約230円)

[開場時間]
 11-3月
  月-土 10:00-17:00
  日 11:00-17:00
 4・10月
  月・火・水・金・土 10:00-18:00
  木 11:00-17:30
  日 11:00-18:00

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