愉快なウサギの天井画、ブチョビツェ城(Zámek Bučovice)チェコ・モラヴィア地方の大邸宅


 
面白い天井画があると聞き、ブルノから30分ほどの郊外にあるブチョビツェ城(Zámek Bučovice / Bučovice castle)を訪ねました。

1575〜1585年に建設されたブチョビツェ城。英語名では「Castle」と訳されているので日本語でも「城」と書きましたが、チェコ語の「Zámek」は「城」というよりは、「宮殿」やフランス語の「シャトー」に当たる貴族の邸宅を表します。

このブチョビツェ城も、元々は貴族のおうち。モラヴィア地方のジョン・シェンベラ・チェルノホルスキー(John Šembera Černohorský)という貴族によって建てられ、彼の自宅だったそうです。

ジョンは、教養があり、芸術愛好家として有名だったらしく、邸宅内の装飾を一流の芸術家に依頼しました。イタリアで学んだ経験があったことから、イタリアのルネッサンス様式がベースとなっていますが、非常にユニークな装飾が多く、特に天井画は部屋ごとに違ったテイストで手に取ってじっくり見たいほどでした(天井画ってずっと見てると首が疲れるから・・・)。

中でも一番楽しみにしていたのが、このウサギの天井画ウサギが擬人化され、狩りをしています。普段、追われている人間と狩猟犬を、逆にウサギが追っているのです。ちょっと日本の鳥獣戯画っぽくないですか。シュールで面白い。


 
 
この絵は、キリスト教の罪を表したものらしいです。キリスト教に詳しくないのですが、人を踏んでる絵とか普段暮らす部屋に描くのってどういう理由なのでしょう。戒め?見ていると痛々しい・・・。


 
 
ゴージャスなんだけど、どこかクセのある天井画たち。蝶ならまだしも蛾の絵とか!
これらの天井画(画というか立体的なのでもはや彫刻)、どれだけの優秀な芸術家を集めて、どれだけの予算をかけて作ったのでしょう。建設期間が11年とのことですが、それも納得の精巧さです。

 
住居として使っていた各部屋は決して広くはなく、大きな窓があるわけでもなく、電気の無い時代だったらさぞ薄暗かっただろうと思います。昼間でも寒々としていてあまり快適そうには見えませんでした。

 
部屋の居心地はさておき、裏庭(建物の裏側なので一応裏庭?)は大変立派。ここに住んでいた貴族たちは、この迷路のような庭を優雅に散歩していたのでしょうね。


 
 
中庭の噴水も見どころです。この建物を建てたジョンの娘の結婚相手が1635〜37年に著名な彫刻家と設計者を招聘して建てたとのこと。これも美しいというよりは、海の怪物セイレーン(上半身が女性で下半身が魚)やドラゴンをモチーフにしたちょっと奇妙な噴水です。


 

当時使われていた道具や洋服、貴族の家系を紹介する常設展示もあります。

 
このブチョビツェ城は、決して大きな建物ではなく、田舎の典型的な城です。少なくともモラヴィア地方にはこの規模のZámekと呼ばれる城が点在しており、それぞれに美しい庭や豪華な内装などの特徴があります。

このブチョビツェ城の面白さは、間違いなくクセのあるユニークな天井画

16世紀に生きていた個性的なアートを好む城主のおかげで、今これらの奇妙な絵を見られるということに歴史の面白さを感じます。

  

アクセス

ブチョビツェ城 / ZÁMEK BUČOVICE / Bučovice Castle
Státní zámek Bucovice, Zámek 1, Bucovice, 685 01
月曜定休
開館時間は時期により違うのでHPの案内を要確認。冬季は閉館。
https://www.zamek-bucovice.cz/

見たいパートによって入場料が違い、50〜200Kč(約250〜1,000円)。
天井画がある部屋を見るには約45分のガイドツアー参加必須。

ブルノから電車で約30分。Bučovice駅下車、徒歩10分。