チェコの機能主義都市「ズリーン(Zlín)」 ② /ズリーン履物博物館



 前回は、製靴会社バチャとズリーンの街の関わりについて書きました。今回は、ズリーンを訪れるなら必見の「ズリーン履物博物館」をご紹介します。

 

14・15ビル「ズリーン履物博物館」

ズリーン中央駅(Zlín-střed)から歩いてすぐのところにあるのが「ズリーン履物博物館(ズリーン南東モラヴィア博物館)(Muzeum jihovýchodní Moravy ve Zlíně)」。
バチャの元・工場棟が並ぶ中心エリアの14ビルに入っているので、14の文字を目印に入り口を探します。

ズリーンに到着して、まずこの博物館へ向かったのですが、駅から建物に辿り着く少しの間だけでも、「ズリーンは他の街と全然違う!」と驚きっぱなしでした。道も建物も洗練されていて、全くチェコらしさが無く、キレイな大学のキャンパス内を歩いているようなのです。

第14ビルと15ビルにある一般向けの施設

14ビルの中は、いくつかのギャラリー、ミュージアムからなっています。
入場券は、一階カウンターで購入します。料金は、一般120Kč(約600円)。このチケットで館内全て見られます。

入館チケットはタイムカードを模したものになっており、展示を周りながら打刻機を探して6回打刻をすることが出来ます。スタンプラリーみたいで楽しい。

 
3階に上がると、靴がズラリと並んでいる展示が目に飛び込んできます。
ズリーンはチェコの靴産業発祥の地ですので、この博物館のメインも靴。世界中から集めた靴、及びバチャの過去の製品、その広告、靴工場の再現が展示されています。

いつの時代のどこの国の靴なのか、展示にキャプションは付いていないので、各靴の説明は入り口の係員から一覧表を貰います(英語版もあり)。

工場で使われていた機械

 

靴を見学した後は、バチャ社について。会社創立から1945年に国営化されるまで、さらに戦後の発展の歴史を紹介しています。バチャが行なった効率的なビジネスの工夫、社員のための医療や教育の充実、などなど。



世界を股にかけたビジネスに必須の世界時計

 

さらには、映画・アニメーション制作スタジオについて。
当初は、バチャの宣伝用のムービーを作る目的で設立したスタジオですが、後に多くのアニメーション作品がここから生まれました。アニメに使ったパペット、原画、映像、ポスターなどが展示されています。

特撮の巨匠カレル・ゼマンもズリーンで制作していました。

 
3階フロアの最後には、チェコの作家、ミロスラフ・ジクムント(Miroslav Zikmund)氏とイジー・ハンゼルカ(Jiří Hanzelka)氏に関する展示。

今から60年近く前に、取材・資料収集のため「チェコ科学アカデミー」のスポンサーで世界一周したこの二人は、今でもチェコで大変有名で人気があります。
ジクムント氏の方はご健在で、1919年生まれのなんと今年100歳。先日迎えたお誕生日にはちょっとしたニュースになっていました。

1963年に日本へ立ち寄った際の日刊スポーツの記事が展示されていました。画像をクリックで拡大出来るので、ぜひ読んで見てください。
二人のことを「赤い国から来た弥次喜多コンビ」と例えている所にものすごく時代を感じる一方、日本人のマスクに驚いているのは現代と全く同じですね。

世界一周の相棒となったあらゆる機能が付いた高性能自動車(のレプリカ)

 
2階はアートの展示です。履物博物館として訪れたので、こちらは特に期待していなかったのですが、展示数は多いし、有名作家の作品もあるし、予想以上の見応えがありました。

アルフォンス・ミュシャ(ムハ)(Alfons Mucha)

モラヴィアの民族衣裳のペイティングで知られるヨジャ・ウプルカ(Joža Uprka)



最後に1階に戻って、エントランスすぐ横にある、企画展コーナー。わたしが訪れた際は、チェコの家電メーカー「ETA」の過去の製品の紹介でした。

当時の人から見てどういうイメージのブランドだったのかは分かりませんが、今でも人気になりそうな可愛いレトロデザイン!これは確かにエキシビジョンにする価値があります。


 

なお、ETAは過去のブランドというわけではなく、現在でも直営店や家電店で購入することができます。デザインは、特に特徴の無いシンプル系。レトロな復刻版とか出したら売れるのではないかと外国人目線では思うのですが、チェコ人からすると古くさく見えるのでしょうか??

 
14ビル内には、他にも小さな企画展がありましたが、主な展示はここで紹介した内容です。
日本語での表記は「ズリーン履物博物館」となるようなのですが、履物だけに留まらず、ズリーンの人々が大事にしているコトを詰め込んだ博物館でした。

 
「ズリーン履物博物館(Muzeum jihovýchodní Moravy ve Zlíně)」
Vavrečkova 7040
10:00-18:00 月曜休館
http://www.muzeum-zlin.cz/cs/objekty/obuvnicke-muzeum


 

バチャのシューズショップ

バチャは、現在は、チェコの企業ではありませんが、チェコである程度の大きさの街なら必ず見かけるバチャのショップ。もちろんズリーンの街にもあります。
ズリーンを訪れる機会があるのなら、ここで一足買うのも思い出になりますね。


1階がレディース、2階がメンズ。広めの店舗です。

「Baťa shoe store」
Dlouhá 130
月-土 8:30-18:30 日 10:00-16:00

 

ズリーンのレストラン事情

ズリーンの欠点を挙げるとすれば、飲食店の選択肢が少ないということです。いや、数の上ではあるのですけど、行きたいと思える手頃な店が無いのです。(チェコでレストランを探す時は、google mapのレビューを参考にしています。)

どうも食指が動かなかったところ、街の中心の大きな公園に面したハンバーガー屋の評判が良さそうだったので、レストランは諦めてバーガーのテイクアウトを外で食べることに。バーガーは美味しかったし、公園の雰囲気は良いし、結果的には大正解でした。

春から夏にかけての夕暮れ時って最高なんですよね。夕暮れ時と言っても、4月でも20時前、夏至前後になると21時過ぎです。昼間ほど暑くなく涼しい風が吹いて、若い学生たちが芝生に座ってビール一本で何時間も喋ってる感じ。



「Bůrger」
Školní 3362/11
月-土 11:00-22:00 日 10:00-20:00


 
次回は、ズリーンにある、プラハに続いて二番目に入場者が多いという人気スポットについて書く予定です。